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米ロサンゼルス近郊で大規模な山火事が発生してからまもなく2カ月。多くの住宅が焼失し、被害額は巨額にのぼると想定されている。日本でも岩手県で山火事が広がるなど、気候変動の影響で災害が大きくなりかねないと指摘される。米国では災害が頻発する一部地域から保険会社が撤退するケースもあるが、将来、「保険のない未来」は訪れるのか。ニッセイ基礎研究所の篠原拓也主席研究員(チーフ気候変動アナリスト)に話を聞いた。
- 「温暖化対策と山火事対策はイコール」 CO2排出が招く悪循環
――気候変動によって夏に猛暑に見舞われたり、台風が激甚化したり、乾燥で火事のリスクにつながったりすると指摘されています。生命保険や損害保険にも影響が及ぶのでしょうか。
生命保険なら20~30年のような長い期間での死亡率などを踏まえ、毎年の保険料をあらかじめ決めます。住宅などへの損害保険は1年更新が多く、災害が発生すれば、次の年の保険料を引き上げていく仕組みです。
保険会社は異常気象の多さなどから、おのずと気候変動を課題だと認識しています。例えば、夏季の平均気温が上がって熱中症が増えれば死亡率も高まり、生保に影響しかねません。損保は気候のシミュレーションで災害の発生を予測して保険料を設定します。気候変動は、こうした計算に不確定要素をもたらします。
全米で上がる保険料、保険会社が撤退した地域も
――米国の保険に関する専門家組織は昨年10月、気候変動が保険に与える影響を分析した報告書を発表しました。米国の状況を教えてください。
2019年から24年にかけた住宅保険の保険料の上昇率は、アリゾナ州で62.1%、1月にロス近郊で山火事があったカリフォルニア州も48.4%などと全米で上昇傾向です。物価上昇もありますが、災害があった州で保険料が上がっています。
さらに保険会社が撤退した地…